角質層まで

化粧品の販売サイトを見たことのある人は少なくないと思いますが、何度も何度も見ていると、そのうち “細かい点” が目に入るようになってきます。

その “細かい点” とは何かというと、バーンと化粧水のメリットが紹介されているところの隅のほうにある、小さなただし書き(注釈)のこと。これは、薬機法(旧薬事法)や景品表示法などに従って表記している場合が多いでしょう。

今回は、そのただし書きのひとつである「角質層まで」「角層まで」という言葉について、いったいどんな意味か、またなぜ「角質層(角層)」でなければならないのか、まとめていこうと思います。

いったいどんな意味?

特に深読みする必要はありません。「角質層まで」「角層まで」という表記は、そのまま、肌のその層までという意味です。

化粧品の通販サイトには、化粧水などの保湿効果をアピールするところで、「肌の奥のすみずみまで浸透します/うるおいが届きます」といったようなことがよく書いてありますよね。

でも、“肌の奥” とか “肌の隙間” っていったいどこのことを指しているのか、その文言だけでは分かりません。あくまでイメージとして表記されているにすぎないのです。そこでただし書きを施すことによって、「角質層(角層)まで浸透します」という意味になるのです。

「別にそこまで考えたことがないけどなあ」という人も多いかもしれませんが、中には、「具体的に書いてくれないと」と考えている人もいるでしょうし、何より、思わぬ誤解をされてはいけません。誤解が生じれば、薬機法や景品表示法にも抵触する可能性が出てくるでしょう。

そこで、そういった厄介なことがないようにただし書きを表記しているわけですね。誤解が生じれば嘘の情報を書いてしまったことになります。嘘は書いてはいけないのです。

これは、別に法律なんて知らなくても、売り手側に課せられるマナーであり一般常識でもありましょう。

角質層とは何?

ここでひとまず、角質層というものをご存知ない方に、簡単に説明をしたいと思います。すでに知っているという方は、読み飛ばしてくださいね。

角質層のお話をするには、まず肌の構造について知っておく必要があります。

肌は、大きく分けて2つの層から成っています。表面側に位置するのが「表皮」で、その下が「真皮」です。よく聞くコラーゲンやヒアルロン酸というのは、後者の真皮にあります。真皮のさらに下(奥)は「皮下組織」です。

でも今回注目するのは表皮。この層も、分けると4つの層に分かれます。表面側から順に「角質層」「顆粒層(かりゅうそう)」「有棘層(ゆうきょくそう)」「基底層」となっています。

角質層は最も表にあるのです。つまり、イラストにするとこんな感じです。

肌の層

角質層は本当に薄いです。想像以上に薄く、ペラペラです。個人差はありますが、0.01~0.03mmと言われています。1mmの1/100の薄さですから、いかに薄いか分かりますよね。

なお、角質層は「角層」とも呼びます。それから、日焼けによるシミの原因となるメラニンは、「基底層」にあるメラノサイトで作られます。覚えておいて損はないでしょう。

なぜ「角質層まで」なの?

「化粧水が肌の奥まで浸透する」といったとき、「なぜ角質層までなのか?」と疑問に思った人は私だけではないはずです。なぜ、「表皮」でもなく「真皮」でもなく、わずか0.01~0.03mmしかない角質層までなのでしょうか。

それはずばり、化粧水は角質層までしか浸透しない “ことになっている” からです。というより、その表現を超えた表現をしてはいけないためです。

例えば、“真皮まで浸透します” とはアピールできないのです。してはいけません。もしそういう表記があれば、それは薬機法違反となりえます。そのため、まず化粧品サイトではそういった違法な表現を使いません。

「肌の奥まで」というのも、閲覧者の中には「真皮(のあたり)まで」といった誤解をする人もいる可能性があり、グレーな表現なんですが、誤解を解く表現や「角質層(角層)まで」というただし書きを行うことで回避します。

言うなれば、「肌の奥まで浸透する」といった表現は非常に賢いわけです。そうでもしないと化粧品を買ってくれる人が減ってしまうという懸念があるかもしれません。だって、(ただし書きではなく堂々と)「角質層まで」と書くと堅苦しいし、なかなか直感的に捉えられませんからね。

その反面、中には「たぶらかしている」「小賢(こざか)しい」と感じる人もいるかもしれません。美容の知識を持っている人にとっては、むしろ(ただし書きではなく堂々と)「角質層まで」と堂々と書いてくれたほうが「潔い」と感じたりするのでは?と私は思ったりします。

角質層までの浸透だから、安心して使える

ここまで読んで、「なんだ。本当の奥までは浸透しないんだ。化粧水って意味ないのかも・・・」と考え始めた方もいると思いますが、それは早合点です。

角質層までの浸透であるからこそ大きな問題もなく安心して使用できる、という点を忘れてはなりません。

角質層の2つ下の層である有棘層(ゆうきょくそう)には、ランゲルハンス細胞という免疫システムが備わっています。異物を感知するとスイッチON。サイトカインという物質を放出し、皮膚炎症を引き起こしたりします。敏感肌の原因になるとも言われています。

だから、化粧水をはじめとする化粧品(薬用化粧品も含む)は、角質層までしか浸透しなくても、それが安心というわけなのです。薬機法による表記の制限も厳しく感じますが、むしろ私たちの肌を守ってくれているのかもしれませんね。

ただ、聞くところによると、化粧品の中には真皮まで到達するものもあるんだとかないんだとか。真面目な化粧品サイトであれば、違法表記はありません。あっても「ある」とは言えませんし、そもそも浸透するか否かなんての調査も、非科学者たる私にはやれるはずがありません。

私を含む消費者ができるのは、何はともあれ、実際に使って「良かった・悪かった」を判断することだけです。浸透したと感じればそれでいいし、感じなければ感じないで終わりです(笑)

そして、化粧品を使っていて異常を来した場合は、すぐに使用を中止することも大切です。もし肌が余計に荒れたのであれば皮膚科にかかり、治療を受けるようにしましょう。

化粧品とは?

上記の中では “薬機法” という言葉が出てきましたが、正確には「医薬品医療機器等法」といい、その第2条第3項では、「化粧品」について以下のとおり規定されています。

人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第1項第2号又は第3号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。

医薬品医療機器等法第2条第3項より

また、化粧品とよく似た「薬用化粧品」についても「医薬部外品」として規定されていますが、言うなれば “ある程度予防効果をうたえる化粧品” という感じなので、条文については割愛します。時間がある方は、是非目を通してみてください。

ともかく化粧品にしろ薬用化粧品にしろ、医薬品とは違うものだということが分かります。肌に関してだけスポットライトをしぼれば、それらは 、あくまで塗擦して “肌の調子を整えるだけのもの(スキンケアするだけのもの)” にすぎないというわけですね。

よくある例(というか化粧品や医薬部外品の宣伝文句)でいえば、

  • 保水・保湿
  • 肌荒れ対策
  • すこやかな肌を維持
  • ハリを与える
  • 外的な刺激から肌を守る
  • ニキビ、メラニン生成によるシミの予防
  • 紫外線の防御

といったところです。治療的な効果は全くないというわけですね。

難しい話は忘れて基本に立ち返ってみても、洗顔料であれば、肌や毛穴の掃除をして清潔さを保ったり化粧水の浸透力を挙げること、化粧水であれば、角質層をうるおわせることでハリを出したりすること、クリームであれば、肌の表面に塗ることで外から受ける刺激(乾燥や紫外線)を防いだりすることであるわけです。

そう考えると、薬機法で規定されていることは、さして厳しいことでもなく、ごくごく当たり前のこと。先ほどの「角質層まで」というのも、自分の肌のハリ・ツヤを出して整わせていく(または綺麗に見せかける)上では何ら変哲もないことだと理解できます。

でも、あの化粧品のサイト・・・

以上のように、「角質層まで」というただし書きについて、法や化粧品の定義をまじえてお伝えしてきましたが、それでも、こういうふうに思った人もいるのではないでしょうか。

  • 「○○というメーカーの化粧品のサイトを見ると、なんかヤバそうなことが書いてあるんだけど」
  • 「私が愛用中の化粧品も、パンフレットに危なかっしいことが書いてあるよ?」

実は私も、“クロ” の化粧品広告を見たことがあります。しかし、グレーであれば、クロに近くてもまず違法とはならないようです。一方、シロに近いグレーはいっぱいありますね。むしろ、完全シロのサイトや広告を見つけるほうが難しいくらいです。

まあ、私はジャッジする人間ではないので、これ以上は何とも言えません。ただ、化粧品を購入するときは、ただし書きまできちんとたしかめ、ウマい話はあくまで参考程度にとどめ、化粧品本来の定義をしっかり頭に携えた上で購入ボタンを押すようにしています。

エステサロンや化粧品ショップに関しては、化粧品サイトや広告よりタチが悪いケースがあります。もちろん、きちんと誠実な態度で接してくださるところもありますが、スタッフが平気で薬機法違反・景品表示法違反の発言をして高額商品へ勧誘してくることがあります。スタッフも一応プロですから法を知らないはずはないのですが、知らないのであれば、上司がきちんと教育すべきだと思いますね。